簾(すだれ)について

はじめに

簾は我々日本人にとって馴染み深く、古くは宮中などで使用されていたことから数々の歌に詠まれてきました。

君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く
 訳)あの方をお待ちして 恋しい気持ちでいると 我が家の簾を動かして 秋の風が吹いています。(額田王/万葉集)

簾には暗い室内から明るい外を見るとよく見え、逆に明るい所から暗い室内は見えにくいという特性があります。
「源氏物語絵巻」には、貴族の男女が簾越しに異性を観察している様子などが描かれています。
簾の掛けられた空間は、外部に対して開かれていながらも外部からの侵入を心理的に拒否する屏障具(調度品)でした。
そのため平安貴族にとって簾に囲まれた世界は、精神的な安らぎをもたらす空間であったと想像できます。

現在の住まいでは空調設備が完備され、簾の代わりにカーテンが主流となり、その存在が忘れられつつあります。
しかし私達日本人が古来から慣れ親しんできた簾には、機能だけではない心情的な面を持ち合わせていて、それは現代社会に生きる私達に優しく安らぎを与えてくれる存在なのです。

神社仏閣用・御簾

神社仏閣などで用いられている簾に、御簾(みす)があります。
御簾は、仏教文化と共に登場したと伝えられ、現在も当時とほぼ同じ姿で伝わっています。

平安時代の貴族の生活空間である寝殿造りの調度品として発達をとげた御簾は、なかでも神を祀る社殿、仏閣では重要な屏障具として用いられ、神聖な場所である神社仏閣や天皇家の重要な儀式が行われる宮中賢所など、大嘗祭の行われた悠紀殿・主基殿すべてに御簾が掛けられていました。
現在では神社仏閣の他に結婚式場などの公共の施設などにも、日本の伝統簾が空間を雅やかに演出します。

about_mark

※当社の御簾は、伝統マーク(※)対応品です。
※経済産業大臣指定伝統的工芸品

すだれ資料館

井上スダレ株式会社では簾を後世に伝承するために、平成16年に「すだれ資料館」を設立しました。
資料館には、我が国で継承されてきた伝統的な製法による簾や、歴史的に価値のある国内外の簾、貴重な道具・機械などを展示しています。
また、簾の伝統的製造技術を次世代に受け継いでいくために、後継者の育成にも精力的に取り組んでいます。

現代の簾

当社では、現在のライフシーンに合わせた様々な簾を展開しています。
古来から現代に続く伝統を大切にした簾、また一方では商業空間から住まいの空間まで。

私達は伝統を守りつつ、時代と共に進化する簾を追い求めています。

このページのトップへ